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『時を経ても鮮明な厳寒の深緑』


【2014年 アメリカJCC】

「爪や心臓など、いろいろ弱点があって出世は遅れましたが、もともと超一流の素質を感じ取っていました。思い入れが深い母系だけに、晴れて重賞ウイナーになったときの喜びといったら」
 相沢郁調教師がこう振り返るのは、ヴェルデグリーンについて。
 母レディーダービー(その父スペシャルウィーク)は未勝利に終わったが、開業したばかりの相沢師に初めてのタイトル(京王杯3歳S)をもたらしたうえ、オークスでクラシック勝ちを果たしたウメノファイバーの産駒である。父はジャングルポケット。2代続けてダービー馬が配されて誕生した。
 2歳12月に中山(芝2000m)でターフに初登場。デリケートな心身に配慮して軽めの追い切りを3本しか消化していなかったのにもかかわらず、長く脚を駆使してあっさり抜け出した。若竹賞はアタマ差の2着。5着だったセントポーリア賞にしても、差はコンマ1秒差に食い下がる。東日本大震災によって関東圏での競馬が休止されたことに伴い、若葉S(13着)に目標を定め直したものの、阪神への長距離輸送が堪えて大幅に体を減らしてしまった。
 半年間の休養後も3連敗。さらに3か月の間隔を開け、4歳2月の東京(芝1600m)で2勝目をつかんだ。だが、以降の5戦はなかなかレース運びが安定せず、足踏みが続く。
 丁寧な立て直しが実を結び、5歳の1月に中山の芝2000mを久々に差し切ると、破竹の快進撃が始まった。調布特別、常総Sも連勝。新潟大賞典は10着に終わったが、中間に蹄のトラブルもあっての結果だった。
 しっかり充電され、オールカマーへ。単勝38・9倍の9番人気にすぎなかったが、これまでよりワンランク上の負荷をかけることができていた。前半は折り合いに専念。隊列の後ろで息を潜めていたが、3コーナーから進出する。その爆発力は驚異的なものだった。レースのラスト3ハロンを2秒7も凌ぐ33秒6の鋭さで、きっちり交わし去ってしまった。
 出遅れが響き、天皇賞・秋(8着)や有馬記念(10着)は不完全燃焼。アメリカJCCでも後方の位置取りとなったが、スタートが決まったことで手応え良く追走。大外を豪快にまくって勝負に出た。勢いは最後まで衰えず、ラスト1ハロンで先頭に躍り出る。5着までがコンマ1秒以内にひしめく接戦でも、鮮烈な印象を残す堂々たる勝利だった。  2度目となるG2制覇に導いた田辺裕信騎手は、こう満面の笑みを浮かべる。
「前走より状態は上がっていて、相手が強くても頑張れました。心もしっかりしてきましたね。オールカマーのときと違い、自分から勝ちにいったんです。こちらの思いにきちんと応えてくれた。指示に対して素直に反応できる利口な馬。僕と同じに下積みから叩き上げてきただけに、愛着は格別なものがありますよ」
 中山記念でも5着まで追い上げ、さらなる前進が期待された。宝塚記念(12着)を経て、秋の再スタートを目指すことに。ただし、思わぬ悲劇が待ち受けていた。トレセン近郊の放牧先で腸閉塞を発症。美浦の診療所で開腹手術を行ったところ、腸全体に悪性の腫瘍が広がっていた。残念ながら、予後不良となった。
「突然の別れだっただけに、信じられない思い。末期の段階だったことを考えれば、病魔に侵されたのはかなり前でしょうね。我慢強く、ずっと耐えていた。たくさんの勇気を与えられましたよ。馬に感謝するしかありません」(相沢調教師)
 


第55回 アメリカジョッキークラブカップGⅡ
1着ヴェルデグリーン  牡6 57 田辺裕信 相沢郁
2着サクラアルディート 牡6 56 Fベリー  岡田稲男
3着フェイムゲーム   牡4 55 北村宏司 宗像義忠

 単勝   570円
 枠連  1,790円
 馬連 14,960円
 馬単 25,160円

3連複  52,170円
3連単  299,470円




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