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『奥深い魅力に満ちた異色の血脈』


【2011年 中山金杯】

 アメリカ産ながら、日本には馴染みの薄いヨーロツバ血統が延々と組み合わされて誕生したコスモファントム。母サザンハウス(その父パリスハウス)はアイルランド生まれで、伊米6勝をマーク。伊1000ギニーのレジーナエレナ賞を2着した。祖母の仔に伊9勝を挙げ、種牡馬となったリオナポがいるものの、イタリアで枝葉を広げている一族であり、活躍の場はローカルばかり。持久力に優れ、カンディンスカイやディックリングといった障害馬も輩出している。
 配合された父は、ドンHに勝ったスティーヴンガットイーヴン(その父エーピーインディ)。産駒には米2歳チャンピオンのスティーヴィーワンダーボーイなどがいる。異系のスピードが注入された。
 2008年のファシグティプトン・ケンタッキージュライイヤリングスに上場され、5万ドル(約530万円)で落札。同年の8月に輸入されると、ビッグレッドファーム明和で順調に育成が進行した。馬主を対象とした共有クラブの「コスモオーナーズ」にて総額2200万円で募集される。
「1歳の暮れに初めて対面したときより、たくましい馬体をしていましたよ。ただ、いかにも脚さばきが硬く、現地の評価はダートの短いところ向き。堅実そうなイメージを受けましたが、重賞ウイナーに育つとは、とても想像できませんでしたね」
 と、宮徹調教師は振り返る。
 完成度の高さが買われ、2歳5月には早くも栗東へ移動した。6月の阪神(ダート1200mを3着)でデビュー。続く新潟も3着に終わったが、札幌のダート1700mで一変し、5馬身差の圧勝劇を演じる。母系のスタミナを証明した。
「距離が延び、長く脚を使える特徴が生きたわけですが、札幌滞在時に目覚めたのも確か。それまでの攻め馬では前向きさが欠しかったのに、動きががらりと変わり、古馬オープンにも先着するほど。いざというときは、きちんと気持ちが切り替わるようになったんです。早熟なイメージに反し、奥深さも感じ始めましたね。札幌2歳S(除外)に出ていても、いいところがあったのでは」
 ダートに適距離の番組が少ないことから、当初は半信半疑で目を向けた芝戦線だったが、同馬はターフランナーの遺伝子も受け継いでいる。野路菊Sを2着すると、萩Sはエイシンフラッシュら強豪をタイレコードで完封。ラジオNIKKEI杯2歳Sでも、勝ち馬のヴィクトワールピサにクビ差まで食い下がった。
「派手さこそありませんが、欠点が少ないタイプです。ゲートの上手さは天性のもの。折り合い面の心配もなく、ペースに左右されないのが心強い。レース前は闘志をむき出しにするのに、普段はのんびりしていて、本当に仕上げやすいですしね」
 放牧先のビッグレッドファーム鉾田での調整が遅れ、3歳春は厳しい戦いが予想されたものの、帰厩後2週間で臨んだ京都新聞杯を2着。ダービー(10着)にも駒を進めた。ダートでの渋太さも健在。ジャパンダートダービーでは2着と健闘した。
 秋シーズンは白山大賞典を3着。直前の大雨で特殊な馬場となったのが敗因だった。天皇賞・秋(15着)が示すように、切れ味比べとなれば分が悪いものの、小回りコースを味方に再浮上する。中日新聞杯は、有馬記念を3着するトゥザグローリーの2着に健闘した。
 そして、中山金杯では堂々と初のタイトルを奪取する。好位のインでぴたりと折り合い、追い出しを我慢。ラストで馬群を割り、力強く抜け出した。
「首周りや胸前の筋肉が盛り上がり、肉体的にますます充実。一杯に見えても、もうひと伸びできるタフさや勝負根性が生きました」
 アメリカJCC(4着)以降の3戦は本調子を欠いたが、冬場に向けて再び上昇。中日新聞杯で2つ目の重賞制覇を成し遂げて4歳シーズンを締めくくる。
 翌年の中山金杯(3着)や小倉大賞典(3着)でも見せ場はたっぷり。だが、心身のフレッシュさを保てず、凡走を繰り返すようになる。久々にトップでゴールを駆け抜けたのは、初の障害戦となった7歳5月の新潟(芝2890m)。高い適性を見せながら、このレースで脚元が限界に達してしまった。金沢大学の乗馬となり、静かに余生を過ごしている。
 貴重な血脈らしく、芝、ダート、ジャンプと多彩な才能を発揮したコスモファントム。味わい深い個性派だった。

 


第60回 中山金杯GⅢ
1着コスモファントム  牡4 56 松岡正海 宮 徹
2着キョウエイストーム 牡6 55 石橋脩  中川公成
3着ナリタクリスタル  牡5 56 幸英明  木原一良

 単勝  280円
 枠連 4,460円
 馬連 3,360円
 馬単 5,320円

3連複  10,770円
3連単  58,100円




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