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『秋空を染める女神の光彩』


【2010年 府中牝馬ステークス】

「もともと期待は大きかった。当歳のセリ(HBAオータムセールにて500万円で落札)で出会ったときに、柔らかい歩きが目を引いてね。テイエム牧場での育成も順調で、仕上がり自体は早かった。ただ、気性に泣かされ、ずいぶん歯がゆい思いをさせられたよ」
 五十嵐忠男調教師が感慨深げに振り返るのは、テイエムオーロラについて。
 レッドディザイア(秋華賞)、ジョーカプチーノ(NHKマイルC)、ヒルノダムール(天皇賞・春)、グレープブランデー(ジャパンダートダービー、フェブラリーS)、クイーンズリング(エリザベス女王杯)など、様々なカテゴリーに一流馬を送り、2009年にはリーディングサイアーとなったマンハッタンカフェの産駒。母のペリーヌ(その父トニービン)は不出走だが、全弟のテンザンセイザが京都新聞杯や京阪杯の覇者という筋が通った血筋だ。祖母のケイシー(その父カーリアン)は米・英4勝。G2・パークヒルSの勝ち馬となっている。
 2歳夏に小倉の芝1200mでデビュー(6着)。続く札幌ではクビ差、ハナ差の2着。4戦目を3着したところで軽い亀裂骨折が判明し、5か月間の休養生活に入る。
「滞在競馬がいいと見込んだのに、開催日は厩までファンファーレや歓声が聞こえてくるから、レースの気配を察知してね。むしろ逆効果だった。復帰後もイレ込みは同様。ゲートインの前に終わっちゃう感じ」
 そんな状況にもかかわらず、未勝利時代もすべて6着以内と崩れていない。8戦目となる5月の京都(芝1200m)で初勝利を挙げ、昇級緒戦のこでまり賞を2着した。それ以降の条件戦で8着が2回あるが、他馬と接触したり、距離ロスが響いたり、敗因ははっきりしている。
 7か月間のリフレッシュを挟んだことをきっかけに、同馬は驚くべき変貌を遂げる。4歳3月の中京(芝1200m)は、3馬身半の差をつける余裕の逃げ切り。5月の京都(芝1600m)を粘り強く勝ち切ると、芝1800mのパールSもハナ差で凌ぎ、3連勝を飾った。2000mの重賞、マーメイドSでもコンマ3秒差の3着に健闘。一息入れ、西宮Sを順当勝ちし、すっかり勢いに乗る。
「課題だった折り合い面もクリアでき、ようやくマイル以上にシフトすることができた。体型を見てもスプリンターではないが、かつては行きたがって仕方がなかったから、短いところを使うしかなかったんだ。パールS(不良)のような力が要る馬場も大丈夫だし、夢はふくらむ一方だった」
 そして、府中牝馬Sへ。初となる関東圏への輸送もクリアし、はち切れそうな馬体を維持していた。手綱を取るのは普段の調教から跨り、特徴を手の内に入れている国分恭介騎手。スタートの速さを生かし、無理せずハナを奪う。4ハロン目より12秒台にラップを落として脚を温存。直線手前ではペースを上げ、後続を引き離していく。坂を登り切ったところで勝負あり。ラストはさすがに脚色が鈍ったものの、懸命のムチに応え、半馬身差を保ってゴール。デビュー2年目の若きジョッキーとともに、初となる重賞の栄光を手にした。
「かつてはイライラして飼い葉を口にしてくれなかったのに、別馬のように落ち着いている。食べたものが実になり、びっしり追えるようになったしね。これなら、いずれはG1でもやれると思ったんだけど」
 マイルCS(10着)を経て、愛知杯に臨んだテイエムオーロラだったが、思いもよらぬ悲劇が待ち受けていた。3コーナーで故障を発生。右前を脱臼する重傷だった。残念ながら、この世を去る。
 無事ならば、さらに豊かな未来が開けたはず。関係者の悲しみは限りなく大きなものだったが、プロとして馬と向き合っている以上、それを埋めてくれるのは新たな栄光でしかない。
「ここまでやれば最高という際限はなく、それがこの仕事の魅力。あの馬が教えてくれたことを大切にしながら、もっと上を目指さないと」
 


第58回 府中牝馬ステークスGⅢ
1着テイエムオーロラ  牝4 55 国分恭介 五十嵐忠男
2着セラフィックロンプ 牝6 55 宮崎北斗 武藤善則
3着スマートシルエット 牝3 53 石橋脩  大久保龍志

 単勝   660円
 枠連  2,490円
 馬連 27,120円
 馬単 44,160円

3連複  60,680円
3連単  423,340円




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