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『砂路線を席巻した超越したスピード』


【2011年 ジャパンカップダート】

 短距離部門とともにダートでの良績が突出している安田隆行厩舎にあって、初となるG1の栄光(JCダート)をもたらしたメモリアルホースがトランセンド。安田師はこう若駒時代を振り返る。
「母シネマスコープ(その父トニービン、5勝)だけでなく、兄姉のメーンエベンター(3勝、地方5勝)やサンドリオン(3勝)も手がけましたが、みな体質がしっかりするのは遅め。500キロ以上の立派な体に育つとは、想像できなかったですね。大山ヒルズでの育成時は線が細く、動きも目立たなかった。実は、すば抜けた闘争心の持ち主でしたし、トレセンに来てからめきめき力を付けたとはいえ、当初は坂路での調教を控えめにするなど、背腰に疲労がたまりやすい面に気を遣いましたよ。いかにも成長途上の状況でレースへ送り出しました」
2歳12月にトレセンへ。当初はゲート内でじっとできず、枠内に固定して練習を積む必要があったが、一度、納得してからはスムーズに調整が進行した。速い時計をマークするようになり、評価が急上昇する。
 デビューは3歳2月の京都(芝1800m、2着)。2戦目に阪神のダート1800mを試すと、ワイルドラッシュ産駒らしい適性を示して初勝利を収めた。中1週で臨んだ京都の500万下(ダート1800m)は圧巻だった。脚抜きが良い馬場状態ながら、勝ちタイムは1分49秒7。アンタレスSに次ぐ開催では2番目タイの速さである。逃げの手に出ながら、36秒2の上がりを駆使。後続が7馬身差もちぎれたのは当然だった。
 ダービーへの夢を賭けた京都新聞杯は9着に敗れたが、ひと息入れたことで、順調な成長曲線を描く。麒麟山特別に向かうと、2着に8馬身差のワンサイド勝ち。1分49秒5のレコードタイムで駆け抜けた。
 次のターゲットはこの年に新設されたレパードS。2番手を馬なりで追走し、勝負どころで軽く仕掛けただけであっさり先頭へ。最後は流して3馬身の差を付ける。前走時よりもパワーを要する馬場状態でも、タイレコードでの完勝だった。
 しかし、エルムS(4着)、武蔵野S(6着)と古馬相手に連敗。アルデバランSの快勝を挟み、アンタレスSも8着と、一時はもろさを垣間見せていた。
「厩ではおとなしく、調教もやりやすいのですが、いざとなれば燃えすぎるほど。力を抜くことを知らず、ごちゃついた競馬が苦手なんです。気分を損ねないよう、行かせたほうがいい。心は決まりましたよ」
 東海S(2着)以降は、ハナを主張することで欠点をカバー。秋緒戦の日本テレビ盃を2着し、みやこSでは重賞2勝目を手にする。
「あれでも力を使い果たした感じではなく、迫られてまた伸びるイメージ。内面の進歩がうかがえました。筋肉の張りを増し、身体もずいぶんたくましくなりましたしね。ハイペースでも押し切れる持久力を備えてきたんです」
 続くJCダートでも果敢に先手を奪い、待機勢に息の入らないペースを演出した。阪神の坂も克服。最後まで脚色は衰えず、ついにG1に手が届いた。
 会心のパフォーマンスに、藤田伸二騎手も堂々と胸を張った。
「少しペースは速くなったが、乗っていて楽だったし、自分のリズムを守り通したまで。時計を求めらる決着も、まったく心配ないからね。狙い通り、晴れてトップに立てた。今後も勝ち続けてほしい」
 5歳緒戦がフェブラリーS。先行勢を競り落とし、追い込み勢にも影を踏ませない1馬身半差の完勝を収めた。そして、世界最高峰のドバイワールドカップに挑戦。ヴィクトワールピサに交わされたものの、半馬身差の2着に踏み止まった。秋シーズンも力は衰えず、南部杯(1着)、JBCクラシック(2着)と順調に歩む。
 再びJCダートへ。ここでも1番人気(単勝2・0倍)にふさわしい強さを見せ付ける。前年のリプレイかと思わせるかたちに持ち込めたうえ、懸命に追いすがる他馬を2馬身も突き放した。
「いつもよりテンションが高かったが、すべきことはわかっている馬。雰囲気は相変わらず良かったよ。この馬にはハナを切るかたちが一番。大外枠を引いても、行き切れればと思っていた。最近、ゲートを出て、ズブさが出てきたので心配したけど、促して主導権を握った時点で、押し切れる自信はあったね。並ばれるシーンもなく、持ち味を存分に生かせた」(藤田騎手)
 旺盛な闘志を奮い立たせて戦うスタイルだけに、張り詰めた気持ちが途切れるのは意外と早かった。結局、以降は未勝利。6歳のシーズンを終えたところで、種牡馬入りすることとなる。
 真っ向勝負で砂路線を席巻したチャンピオンホース。いまのところ大物を送り出せていないが、真価を発揮するのはこれからだろう。常識を超越する(英語でトランセンド)巻き返しを期待したい。
 


第12回 ジャパンカップダート(GI)
1着トランセンド    牡5 57 藤田伸二 安田隆行
2着ワンダーアキュート 牡5 57 和田竜二 佐藤正雄
3着エスポワールシチー 牡6 57 佐藤哲三 安達昭夫

 単勝  200円
 枠連 1,570円
 馬連 1,750円
 馬単 2,180円

3連複   920円
3連単  6,180円




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