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『苦難の末に放った特大ホームラン』


【2007年 ステイヤーズステークス】

 晩成タイプの馬には、つい愛着を寄せてしまうのだが、ステイヤーズSで重賞勝ちを果たしたマキハタサイボーグは、特にその歩みがドラマチック。24戦目にしてつかんだ栄光だった。
 父は天皇賞・春を制したメジロブライト。同馬が初のタイトルホルダーに輝いた。母シンミスアンサー(その父ノーザンアンサー、3勝、京都牝馬特別を3着)の半兄にシンブラウン(日経新春杯2着)がいて、半弟にもシンチェスト(京都記念)、テイエムジャンボ(京都記念、京都金杯)がいる優秀なファミリーだ。
 2歳の9月に阪神の芝1600m(7着)でデビュー。同条件をもう一戦(7着)したところで脚元の不安による9か月間の休養があり、初めてトップでゴールしたのは未勝利戦が終了した後、8戦目の500万(福島の芝2600m)だった。当時はここまで出世するとは、関係者の誰もが想像していなかった。
 担当した矢野賢一厩務員は、感慨深げに話す。
「崖っぷちから生き返った馬です。障害への転向も考えたんですが、まるでセンスがなくて断念。ラストチャンスをクビ差で制していなければ、現役続行を諦めたでしょうね。それまでは馬っけがすごくて、調教もままならない感じ。ちょうどいいタイミングで、去勢手術ができました。ゲートの悪さも悩みの種。枠内にくくり付けて、我慢させる練習を徹底的にやれたのも、時間的な余裕ができたから。その後は性格的にも大人になりましたし、地道に力を付けてきましたね」
 同馬の調教に跨り続けていたのが高井彰大騎手(現在は調教助手)。運命の一戦をこう振り返る。
「僕は別に乗り馬がいて、後方でゴール。スタートのとき、サイボーグに乗った芹沢さん(純一騎手、現調教助手)の叫び声が聞こえた。ゲートに突っ込みそうになったんです。掲示板を見て、びっくりしましたよ」
 4歳秋になり、京都の芝2400mで2勝目をマークすると、1000万クラスは2戦で卒業(八瀬特別)。不器用な面は相変わらずながら、息長く使える差し脚に磨きをかけ、5歳の5月には烏丸Sに競り勝つ。宝塚記念(10着)は後方のままに終わったものの、はっきりした原因があった。道悪は極端に苦手なのだ。
 夏休みを経て、京都記念(7着)、アルゼンチン共和国杯(9着)と歩み、着実に状態を上げる。心身ともに完成され、オープン馬の風格が備わってきた。
「ひ弱な馬ならば、めげちゃうところ。ハードに攻めましたからね。偉いヤツです。以前はハミにもたれて、首を伸ばし切って走っていたのに、別馬のような乗り心地になりました。ステイヤーらしく追い切りは動きませんが、トモに力が付き、走るフォームが変わってきましたよ」(高井助手)
 そして、ステイヤーズSへ。もともと破天荒な個性だけに、レース前に大人しすぎても結果は出ない。抜群の気合い乗りを見て、矢野厩務員は「もしかしたら」と直感したという。
「ジャンプしながら走るのが、好調のサインなんです。あのときの返し馬もそうで、内心は『よしよし』って思っていましたね。4コーナーでばらけ、この馬には理想的な展開。豊富なスタミナが生きました」
 前半はスローに流れていたが、2周目の向正面で一気にペースが上がった。インで脚をためていた同馬は、コーナーで外に持ち出し、早めに先頭を奪う。懸命に追いすがる後続を寄せ付けず、悠々とゴールイン。吉田豊騎手の好判断が光った。
 9歳の万葉S(7着)まで、以降は15戦を消化しながら未勝利に終わったマキハタサイボーグ。三振が多いゆえ、常に人気と無縁だった。優勝した際の単勝支持率は、8、6、10、5、7番目。それでも、ステイヤーズSで放った特大アーチは、多くのファンの目に焼き付いている。
 


第41回 ステイヤーズステークス(GⅡ)
1着マキハタサイボーグ せ5 57 吉田豊  新川恵
2着ネヴァブション   牡4 58 北村宏司 伊藤正徳
3着アドマイヤモナーク 牡6 57 村田一誠 松田博資

 単勝  5,070円
 枠連  5,570円
 馬連 14,120円
 馬単 41,010円

3連複  55,720円
3連単  582,350円




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